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「龍を食ったぜ」
兎が暮す島に突如現れた虎はそう言った。
旅の仲間たちと「赤道」を目指して旅立った虎、水族館、火山、……そうしてたどり着いた、「名もなき島」。
さてそこは、おそらく今世にのこるどんな博物誌をひもといたとて、世界の涯とすら記されていない場所だった。
小さな小さな島だ。宇宙の中心に眠っているという龍が、―龍、そう、筆者は通常ドラゴンと呼ばれる生物を書くときには「竜」と表記することを好むのだが、ここでは、尻尾の生えたカメのような文字ではなく「龍」という文字がふさわしい生物の話をしようとしている―幾重にも巻きついて螺旋をつくってもあまるような、小さな小さな島だ。
その島に、ある日、虎が流れ着いた。虎なる生物が泳いで海を渡る習性があるとはとんと聞いたことがない。だからこの虎は泳いだのではなく、きっと流れ着いたのだ。世界の涯ですらないこの島に。
A6(文庫サイズ)/76ページ/本体リソグラフ印刷/カバーオンデマンドゴールド印刷
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